翔田寛『誘拐児』



昭和21年、5歳の男の子が誘拐される。金は奪われ、男の子は戻らなかった。
それから15年後。
ある女が殺される。ある男は母が残した言葉を気に病んでいた。
やがて、誘拐と、殺人と、男の悩みは結びついて……というお話。
第54回江戸川乱歩賞受賞。

このところ読んだ乱歩賞に比べれば、良い方でしょうか。舞台が昭和30年代だったためか、昔の乱歩賞作のような印象でした。
暗くて地味な話なので、好みは別れると思います。あと解決も。
私自身が楽しんだかどうかも微妙なところ。

小林恭子、他『日本人が知らないウィキリークス』



国家や企業の非倫理的な行為を暴露していくウェブサイトWikiLeaks。その成立と歴史、社会や政治や世界に与えた影響、ジャーナリズムとの関係や技術的な仕組みだけでなく、ジャーナリズム論まで、7人の政治学者、社会学者、ジャーナリストなどによって書かれます。

少々あおり気味の酷いタイトルとは裏腹に、入門書としてよく出来ています。WikiLeaksってニュースでは聞くけど、本当のところどうなの?という方は一読をおすすめします。
残念なのは、発行されたのが11年2月末で、この本のことは勿論のこと、WikiLeaksに対する関心そのものが、地震で吹っ飛んでしまったこと。またその後にはNSAによる大規模盗聴と情報収集の実態が暴露されて、WikiLeaksはちょっと影が薄くなってしまったことでしょうか。

天祢涼『キョウカンカク』



音を視覚で感じることが出来る共感覚を持つ美少女探偵 音宮美夜が、女性を襲う猟奇的犯罪に挑む……というお話。
第43回メフィスト賞受賞。

うーむ、と唸ってみる。
音宮は単に音が色で見えるだけでなく、話す声でその人がどんな感情・気持ちでいるか、意思すら判ってしまうとのこと。これは本来の共感覚からは逸脱しているが、それはそれで小説的な設定と思えばよいが、そこまで鋭敏な感覚を持っていても、変なところがちらほら。
例えば、現代の携帯電話はリファレンスになる数千の音の中から、話者の声と一番よく似た音を相手に届けているだけですから、本人の声ではありません。そんな携帯電話越しの声で意思がちゃんと「見える」のでしょうか?

そこまでこだわることはないのですが、気になりだすと、どうしても許せない感じになってしまいました。

中田永一『百瀬、こっちを向いて。』



スクールカースト(嫌な言葉だ)下位の僕が、野良猫のような目をした美少女百瀬と恋人として付き合うことに。そこには当然?カラクリがあって……という『百瀬、こっちを向いて』
海で溺れて以来昏睡状態となり、5年目に目覚めたわたしは、少しずつ5年前の事故の真相に近づく……という『なみうちぎわ』
テープ起こしのアルバイトを始めた高校生のわたし。あるときテープの中で話している覆面ミステリィ作家が知り合いだと気付き……という『キャベツ畑に彼の声』
過去の嫌な出来事から、学校では素顔がわからないくらいの化け方をしている わたしは、ある時同級生の男子に素顔を見られ、咄嗟に「妹だ」と嘘をついてしまう。でもそれでは済むわけもなく……という『小梅が通る』
以上、4つの話の入った恋愛小説短篇集。

恋愛小説なんていうとベタベタの甘いものを思い浮かべるかもしれませんが、そんなところは全くないのに、見事な仕掛けで主人公達を恋に落とします。上記のあらすじなんて吹き飛んでしまうような、二重三重の伏線が張られ、時には読者を騙す記述も交えながら、綺麗なストーリィになっています。

本作は作者の一作目ではありますが、まぁ、詳しくはGoogle先生にでもお尋ねください。
私はとても好きな作家ですので、名前はどうあれ、作家活動再開を喜びたいです。

西原理恵子『生きる悪知恵』



投書相談形式で書かれる60のお題に、りえぞう先生が答える、という本。

例えば
70社受けてもダメ。出口の見えない就活に疲れ果てました
という相談に、
正面から入れないなら、横入りすればよし。
とか答えちゃう。

もっとも、
「世間では一流と呼ばれる部類に入る私大の学生」
と称しちゃう相談者に、
「世の中にはもっと一流の大学があって」
「東大だけで毎年3000人卒業してて」
「早稲田や慶応がいて」
「海外帰国組の英語やなんやらがペラペラの人がいて」
「親のコネ組もいて」
と、あんたなんて大したことなんだよとさり気なく書き、
「どっこも取ってくれないのは逆にチャンス。やりたいことをやればいいんだから。まさか22年も生きてて、何もないなんてことないよねえ?
と、ちょっと勘違い気味の相談者に とどめを刺すところは、さすが りえぞう先生、腹黒くていいです。

サブタイトルの『正しくないけど役に立つ60のヒント』というのがピッタリの内容です。
楽しみました。

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