三田誠広『永遠の放課後』

永遠の放課後 (集英社文庫)永遠の放課後 (集英社文庫)
(2006/06)
三田 誠広

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元ミュージシャンだった父が失踪し小さな頃から祖父と暮らしていた「ぼく」は、音楽事務所を営む母と暮らすため転校し、同級生の少女と、その幼馴染と友人になる。三人はギターを弾き、一緒にPPMS&Gを歌うが、やがて道は別れ、大学生になった「ぼく」は妙なめぐり合わせから、かつて一世を風靡したがヴォーカルの死で沈んでしまったグループ「青い風」の一員としてステージに立つことに……というお話。

基本的には三角関係のお話です。友人達との三角関係、両親とその友人プロデューサの三角関係、そして青い風の三角関係。
でも、「三角関係」という言葉から受けるどろどろ感とか、そんなものはまるでなくて、皆どこか達観しているというか、油が抜けているというか、枯れた感じ。
話全体も同じように淡々と進んで行き、誰も傷つかず、誰も悪者にならず、皆とても物分かりが良い。

作者は私が子供の頃に人気だった芥川賞作家ですが、何かそこから時が止まったような雰囲気です。
例えばグループの名前。30年前だとしても既に「オフコース」や「サザンオールスターズ」だったわけで、「青い三角定規」とか「赤い鳥」までくると40年以上前になります。
田舎の街では音楽の話が出来る友人が居なかったと主人公が言ってますが、私が子供の頃ですら、ロック好きの子達は、学校から「不良」のレッテルを張られながらも仲間を見つけていました。
主人公たちは、医者の(つまり裕福な)家の応接間に集まってセッションをしますが、今ならさしずめレンタルスタジオでしょうか。高校生くらいの女の子が、大きなギターのソフトケースを背負って歩いているのを、最近良く見ますよね。

昔の話を書くならこれでいいのでしょうけど、90年代後半から00年代の中学生・高校生・大学生を描く青春小説だとしたら、残念ながら×。
だから00年頃のことを書いているふりをしながら、実はこれは六十代の人達をターゲットに、自分の青春を懐かしむ話かもしれません。そう思うと、三角関係の枯れた感じも納得がいくところ。「そうだよ、あの頃はこんな(小さな)ことに悩んだんだよなぁ」と縁側でお茶を啜る感じ?
四捨五入50歳の私でも、今更誰かを傷つけたとか傷つけられたとか、そんな話は読みたくない、という心情がわからないでもないし。

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