手嶋龍一『スギハラ・サバイバル』

スギハラ・サバイバル (新潮文庫)スギハラ・サバイバル (新潮文庫)
(2012/07/28)
手嶋 龍一

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ヒトラーとスターリンが行ったポーランド分割を受けて、多くのユダヤ人は祖国から脱出をはかり、中継地の日本へ流れ着く。そんな中の二人、アンドレイとソフィー、そして神戸の浮浪児・雷児は友人となるが、やがて道は別れていく。
時は流れて、現代。前作でロンドンの本部の怒りをかって謹慎中の情報士官スティーブンは、金融市場の不可解な動きに気付き探っていくと……というお話。

随分前に読んだので細部は忘れてしまいましたが、前作『ウルトラ・ダラー』が面白かった記憶だけが残っていて、こちらも手に取りました。

が、残念、という出来です。

前半のアンドレイ一家のポーランド脱出行は、背中がゾクゾクするような感じでした。
昨日までの幸せだった生活を惜しみつつも捨て去ることに、文字通り命がかかっています。
勿論史実としては知っていたことですし、今回、なぜそんなに入り込めたのか正直わからないのですが、
もしかすると、今報道されているクリミア半島やウクライナのこととオーバーラップしたからかもしれません。

一方、現代部分はとても酷い出来でした。そもそも「スギハラ」でも「サバイバル」でもないですし。
出てくるエピソードも、夕方のニュースショーなどの「テロリストの手口はこうだ!」程度の表層的なもので、実際それを行った時の困難さや、当局との戦いとか、いくらでも重層的に出来そうなのに、通り一遍に通り過ぎるだけ。何よりも、各エピソードが全く繋がりが無く、時には主人公にどう繋がるのかすらわからないような粗さ。
最後に至っては、何でここで終わるんだっけ?と思うような終わり方でした。

元は『スギハラ・ダラー』という名前で発表されたことも考えると、前作の好評を受けて無理矢理作ってみました感がありありでした。
小さなエピソードをいくつも用意できるならば、最近の流行りの連作短編物にした方が良かったような気がします。

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