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小川洋子『薬指の標本』


薬指の標本 (新潮文庫)薬指の標本 (新潮文庫)
(1997/12/24)
小川 洋子

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表題作『薬指の標本』と『六角形の小部屋』の二篇の入った短篇集。

『薬指の標本』
形あるものでも無いものでも、持ち込まれた思い出の品を標本にして保管する「標本室」に勤める私。あるとき唯一の同僚である標本技術士の弟子丸氏に素敵な靴をプレゼントされる。毎日その靴を履いているうち、いつしか靴は足と一体化していく。
特に事前知識も無いまま読んだのですが、思いの外エロティックな話でした。靴や女性の足というものが、男性にとっては既にある種エロティックな対象ですが、さらにその扱い方や愛で方や描かれ方などが、エロティック。
一方、弟子丸氏には普通の意味の愛情は感じられず(愛情と性欲を分けるべきか、という話は別にして)、取りようによっては、とんでもないホラー話かもしれません。

『六角形の小部屋』
スポーツクラブで見かけた初老の女性。彼女を追ううちに、私は六角形の「カタリコベヤ」にたどり着く。人はカタリコベヤに入って自由な言葉を話すが、それは録音されているわけでも、誰かが聞いているわけでもない。だから、何かアドバイスや慰めや叱責が返ってくるわけではない。ただ部屋に入り、ただ話し、ただ出てくる。でもそんな部屋を多くの人が求めているので、番人の二人、ミドリさん(最初にみかけた初老の女性)とユズルさんは、一定期間留まった後、部屋を解体して次の街へ移動する生活を続けている。
主人公の前から二人とカタリコベヤが消えた後、最初のスポーツクラブでミドリさんと一緒にいた老婦人、
「いかなる場合でも自分のペースを崩さない、他人の迷惑に鈍感な(中略)口ではごめんなさいと繰り返しながら、心の中では何とも思っていない」
そんなタイプの老婦人に、思わず部屋のことを話しかけるが、婦人は人差し指を主人公の唇に当て、何も言わずに泳ぎ去る……
さて、
これは何を表すのか? そもそも「何を表すのか」考える事そのものが余計なことで、ただこの静謐な世界を愉しめばよいのでしょうか。
思うところはいろいろ有りますが、それはそれぞれの人の心の中に留めるということで。

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