窪美澄『ふがいない僕は空を見た』


ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)
(2012/09/28)
窪 美澄

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「おれ」は高校が終わると週一、二回、近くのマンションの一室へ行き「なんとかというアニメのなんとかという役」のコスプレ姿で人妻のあんずとSEXをする。そんな「おれ」と周りの人達の短編連作集。「ミクマリ」「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」「2035年のオーガズム」「セイタカアワダチソウの空」「花粉・受粉」の五篇収録。
R-18文学賞大賞、山本周五郎賞受賞。

R-18文学賞は「女による女のためのR-18文学賞」とのことで、女性が書く女性のためのエロティックな小説を対象にした公募新人文学賞でした。今は書き手が女性であればジャンルを問わず応募できるようになったようです。
一歩間違えば色物になりかねませんが、主催が新潮社のためか(?)、受賞作には女性だけでなくおっさんの私が読んでも面白い話があったりします。

大賞受賞したのは、厳密にはこの本の巻頭の「ミクマリ」という短編。35ページあまりの話で、短いながらちゃんとしているのだけれど、なんというか、綺麗にまとまっていて鉄板の安定、という感じ。それだけに余り意外性はない。だからストーリーに対する受賞というよりは、作者のプロの力量に対する受賞のような感じだろうか。
他の四篇は、「おれ」の周りの人達をピックアップしながら、ミクマリ前後の出来事を並列的に描いていくのだが、起こることが何か作者の悪意を感じてしまう。登場人物の悪意は気にならないのですが、作者の悪意はどうも好きになれないのです。単に私の好悪であって話の良し悪しとは関係ないことですが。

一冊にまとまったこの本全体としては、山本周五郎賞受賞。
個人的には、エンタメ系小説賞としては、直木賞より山本周五郎賞の方が面白い作品を選ぶと思っています。芥川賞も直木賞も知名度は高いですが、その作家の一番の作品を選び損ねることが多いと思うので。
それだけに、悪くはないが、これが山本周五郎賞というのは「ん??」というのが偽らざるところ。
(妄想始め)
山本周五郎賞の主催は新潮社関連団体で、概ね二年に一度は新潮関係の作品が受賞していて、この前年は他社作品受賞だったので新潮関係に賞を取らせたかったのかもしれませんけど。
(以上、妄想終わり)


本の帯の表紙側には「泣ける!けどR18!!」とあるけど、これで泣けるかなぁ??
ただ、帯の背表紙側は朝井リョウ氏の十行余りの文が付いていますが、こちらは、上手いな、これ、と思わせる文でした。

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