恩田陸『月の裏側』

月の裏側 (幻冬舎文庫)月の裏側 (幻冬舎文庫)
(2002/08)
恩田 陸

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九州の水郷の街・箭納倉で相次いで起こった失踪事件。いずれも一週間ほど経つと何事も無かったように戻ってくる失踪者達。
でも何かが違うということに気付いた?妄想に囚われた?元大学教授の協一郎は元教え子の多聞を呼び寄せ、嫁ぎ先から息抜きにやってきた娘の藍子、新聞記者の高安と共に調べていくと……というお話。

割りとのんびりと話は進みます。描かれる風景や情景は叙情的でもあります。
「結果の怖さ」ならホラー、「何故こうなった」ならばSFなわけですが、どちらでもありません。
では、何の話かと言えば、アイデンティティの話です。

確かに事件は起きるわけですが、そんな大きな力が無かったとしても、こういったアイデンティティの、「確認」というか「危機」というか「妄想」というのは、普通においてもあるんじゃない?と思うところが、本当はよく考えないといけないことかもしれない。
そういう意味では、最後に大事件になってしまうのは、個人的にはちょっと、うーん、というところが無いでもない。まぁ、物語としては何もなく終わるわけにはいかないでしょうけど。

細かなことですが、
藍子、高安がそこにいたのは分かりますのが、小説技術としては、多聞が何故呼ばれたのかは、最後まで曖昧なままでした。
確かに彼はいるべきだし、話にはハマっているのですが、彼が登場する動機は、ちと、弱い。

面白かったです。

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