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有川浩『図書館戦争』

図書館戦争  図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)図書館戦争 図書館戦争シリーズ(1) (角川文庫)
(2011/04/23)
有川 浩

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「メディア良化法」の検閲権に対抗するため成立した「図書館の自由法」に基づく図書館隊に志願入隊した笠原郁の成長物語(の、ふりをした……)

ストーリィについて説明は不要でしょう。既にあちこちで書かれているし、アニメにもなったし(私はGoogle日本語入力を使っていますが、「メディア良化法」「笠原郁」「良化特務機関」なんて一発で変換できますもの)。
私の世代で例えれば『スチュワーデス物語』。ドジでのろまなカメは、一生懸命教官に付いて行く。笑いあり、涙あり、恋もあり。
さらにこちらは「戦闘もあり」。
良化特務機関と図書館隊との戦闘は、故意に殺すつもりはないが、結果としての死も辞さず。というか、最初から火器使用ありきですから、人が死なないと仮定する方が無理がある。表現の自由を巡って日本人同士が市街戦を行うということに、リアリティがあるかと言われれば答えるまでもない。こんなになる前に、誰か何かするだろう。
でも、「気にならない」と言っては嘘になるが、「いいじゃない、そのくらい(無茶な設定でも)」という気になってしまうところが、スゴイ。このパワーはどこから来るんだ?
本当は『パトレイバー』くらいにしたかったんじゃないかなぁ。

でも実は、
スチュワーデス物語が、のろまなカメと教官のベタベタな恋愛物語のように、こちらも「郁と堂上の恋愛小説ですぜ、へへへ」と作者は言いつつ(って、作者がそう言ったかどうかは知りませんが)、
実は本当に書かれるのは「検閲」「思想信条の自由」についてだったりする。こんなところは巧み。色恋や戦闘とのバランスも良いところ。それぞれ楽しく、それぞれ面白い。

東京都の条例もそうですが、時にヒステリックに叫ばれる「悪書排斥運動」の行く末に、何か不気味なものを感じるのは考え過ぎかな?
折しも、国境なき記者団発表の2011年版報道の自由ランキングで、日本は11位から22位へ大きく後退。
Press Freedom Index 2011-2012 - Reporters Without Borders
時事ドットコム:日本は22位に後退=「アラブの春」で変動も-報道自由度ランク
作中にも出てくる、法律の恣意的運用を回避するための「任意協力」「自主規制」と、国民の無責任・無関心って、本当に怖いと思う。

作者の作品を読むのはこれが初めてなのですが、自称「大人向けライトベル作家」というのは言い得て妙だと思います。
次巻以降も楽しみ。棚にはデビュー作『塩の街』も待っていたりします。

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